当り前のこと。

私は開発なんてことを現在職業にしてます。
開発者は、設計した製品の発注先工場へ、工程指示のために行ったりすることがよくあります。
そうすると、少なくとも部長クラス、工場の規模によっては取締役とかが頭を下げるわけです。休憩のときには飲み物が向こう側から出てきますし、朝から行ってて作業時間が昼飯の時間にかぶると、奢ってもらえたりします。平の作業員なんか、みんな挨拶するときに頭下げていきます。
勘違いしてはいけないのは、「私」に頭を下げてたり奢ったりしているわけではなくて、私の持ってきた「仕事(と、その次の仕事)」に対して頭を下げたり奢ったりしているのです。似た仕事を他の人が持ってきたら同じように頭を下げるでしょうし、てぶらで私が訪ねていっても頭は下げないでしょうし、ましてや昼飯を奢るなんてことはありえません。
立場から言えば私は発注先を選べます。しかし、自分ではその作業を出来ないから発注するということを忘れてはいけません。
先の工場の件で言えば、私が設計した製品では、0.2mmピッチのはんだ付けが必須です。具体的には、0.2mm間隔で50本×2列ほど並んでいる端子に導線をはんだ付けするのですが、端子の幅は0.3mmです。定規で見てみれば、細かさが分かるかと。私にはとても出来ませんが、工場の人はほいほいとやってくれます。
つまり、発注先を選べる、という点では私が有利ですが、作業できる、という点では相手が有利なのです。
何を言いたいかというと、「客だから俺は偉い」という理屈は成立しませんし、ましてや「お客様は神様です」なんてのはリップサービス以外の何者でもありません。客の要望をなるべく叶えようとするのは、その要望で自分の技術力を上げられて、他のところから来る次の仕事につながるし、ついでに今の客の機嫌も良くなって金払いとか次期発注に有利になるだろう、という理由の元に叶えるのです。要望を出した「俺」のために叶えるんじゃないのです。

こんなの当り前と思ってたけどなぁ。
私の「当り前」はどうやら世間の「当り前」とは少し違うらしい。やれやれ。